【お弁当の食中毒対策】管理栄養士が実践するポイントを解説!

 梅雨時期や暑い夏のお弁当、食材が傷みやすく、食中毒にならないか心配…と思っていませんか?

 せっかく手作りするなら、安全で安心して食べられるお弁当を用意したいものです。私自身、管理栄養士として、そして家庭では高校生の息子に毎日お弁当を作る母として、お弁当作りには特に気をつけています。

 この記事では、私が実際に実践している食中毒を防ぐための具体的な工夫をご紹介します。

食中毒予防の大原則「つけない・ふやさない・やっつける」

 食中毒とは、原因となる細菌やウイルスが付着した食べ物を食べることで、下痢や腹痛、吐き気や発熱などの症状が出る病気です。食中毒を予防するには、原因となる細菌やウイルスを『つけない』『ふやさない』『やっつける』ことが重要です。

 以下では、この三原則をお弁当作りにどう活かすか、シーン別に解説します。

管理栄養士が実践する、お弁当の食中毒対策
  • 手をよく洗う
  • 手に傷がある時は手袋をつける
  • お弁当箱は清潔に保つ
  • 食材をよく洗う
  • 中心までしっかり加熱する
  • 体調不良のときは無理をしない
  • 作り置きのおかずは再加熱する
  • しっかり冷ましてから詰める
  • 素手で食材に触れない
  • 汁気をよく切る
  • 抗菌効果のある食材を使う
  • ソースやケチャップは別添えにする
  • 持ち運ぶ時は、保冷剤を必ず使う

◆ 作る前にできること

・手をよく洗う

 石けんで30秒以上、手首までしっかり洗いましょう。指先・爪の間も念入りに。

・手に傷がある時は手袋をつける

 手荒れや傷口には、食中毒の原因である黄色ブドウ球菌が増殖しやすくなります。手荒れや傷がある場合には、手袋を着用し、素手で直接食品に触れないようにしましょう。

・お弁当箱は清潔に保つ

 お弁当箱のふたの細かい部分は、泡スプレータイプの洗剤やブラシ等を利用して、すみずみまで洗い、よく乾かしておきます。詰める前には、70%以上のアルコールを噴霧消毒し、自然乾燥させるかペーパーで拭き取ります。

◆ 調理中の注意ポイント

・食材をよく洗う

 野菜や果物は流水で丁寧に洗い、泥や汚れを落とします。

・中心までしっかり加熱

 肉や魚・卵は中心温度75℃以上で1分以上の加熱が目安。加熱不足は食中毒の原因になります。ほとんどの細菌やウイルスは十分な加熱によって死滅するので、しっかり加熱しましょう。冷凍したものを凍ったまま加熱する場合、外側は火が通っていても、中は生焼け…ということがあります。中心温度計を使って、調理後の中心温度を測って確かめると安心です。

・体調不良のときは無理をしない

 調理をする人が発熱や腹痛があるときは、すでに何らかの細菌やウイルスに感染している恐れがあります。感染を広げないためにも無理をせず、調理は他の家族にお願いするか、調理済み食品を調達するようにしましょう。

◆ 詰める時の工夫

・作り置きのおかずは再加熱

 前日に作ったものをお弁当に詰める場合は必ず再加熱してから詰めましょう。どうせ冷まさないといけないなら、冷たいまま詰めればいいや…という考えは危険です。

 家庭で作り冷凍保存していたおかずを凍ったまま詰めると、お弁当箱の中で解凍されているうちに水分が溶け出し、菌が増殖して、食中毒のリスクが高まります。必ず再加熱してから詰めましょう。市販の自然解凍OKの冷凍食品は、厳密で特殊な衛生管理のもと作られ、過酷な条件下でも食中毒リスクがないものだけが商品化されています。

・しっかり冷ましてから詰める

調理後直ちに提供される食品以外の食品は、食中毒菌の増殖を抑制するために、 10℃以下又は65℃以上で管理することが必要である。

 大量調理施設衛生管理マニュアル

 食中毒菌が最も繁殖しやすい温度帯(約20℃~50℃)の時間を可能な限り短くしましょう。

 調理後のおかずを速やかに冷ますため、バットや平らな皿に広げ、保冷剤や解凍プレートに乗せて冷却しています。暑い季節はさらに、うちわで仰いだり、扇風機の風を当てたりすると良いでしょう。

・素手で食材に触れない

 お弁当箱に詰める時は、使い捨て手袋や菜箸を活用し、おかずをなるべく素手で触れないようにします。おにぎりを握る時は、ラップや使い捨て手袋を使います。

おにぎりが温かいままラップやホイルで包むと、ラップの内側に蒸気がこもり、水滴がついて傷みやすくなるので、握ったおにぎりがしっかり冷めてから、ラップやホイルで包むようにしましょう。

・汁気をよく切る

 水分が多いと細菌が増えやすくなります。ペーパーで拭き取ったり、ごまやかつお節など水分を吸収する乾物を使ったりして、工夫しましょう。

 汁漏れは細菌の温床になり、増殖した菌がお弁当内全体に広がってしまう恐れがあります。 仕切りや使い捨てのカップを使って、汁漏れを防ぎましょう。

・抗菌効果のある食材を使う

 梅干し、酢、生姜、大葉など、抗菌作用がある食材を使うのも効果的です。お弁当用の抗菌シートを活用するのも良いでしょう。抗菌シートは、からし・しょうが・わさびなどの天然由来の抗菌物質や銀イオンによって、菌の増殖をおさえることが検証されています。

お弁当用抗菌シートの種類によって効果的な使い方が違うので、注意が必要です。「接触型」はシートに触れている面のみに効果を発揮し、「拡散型」はお弁当全体に効果を発揮します。

・ソースやケチャップは別添え

 ソースやケチャップは意外と水分を多く含んでいます。さらに、ソースやケチャップに含まれる塩分によって、野菜から水分が出やすくなり、細菌が繁殖する原因となります。別の容器に入れ、食べる直前にかけるようにしましょう。

◆ 保存するときのポイント

・持ち運ぶ時は、保冷剤を必ず使う

 夏場は必須!お弁当袋に保冷剤+保冷バッグを併用して、温度管理を徹底しましょう。

◆ 食べるときに注意すること

・食べる前は必ず手を洗う

 外出先でも、ウエットティッシュやアルコールジェルを活用しましょう。

・異臭や変色がある時は食べない

 「なんかおかしいな…」と感じたら、無理せず食べるのをやめましょう。

食べる人の協力も必要です。自分の身を守るためにも大切なことなので、きちんと話しておきましょう!

傷みやすい食材・おかずには注意!

  • マヨネーズ
  • 練り製品(ちくわ、はんぺんなど)
  • ハム:加熱せずに使うのは控える
  • ミニトマト:ヘタに菌がつきやすいため、ヘタを取って洗ってから使う
  • 生野菜(レタス、きゅうりなど):加熱しない食材は避けた方が無難
  • チャーハン
  • 炊き込みごはん

ちくわやハムなど、そのまま食べられる食品も加熱してから詰めましょう。
どうしても果物を持っていきたい時は、別容器に入れてください。蓋に保冷機能が付いている容器を使うのも良いですね!

終わりに

 毎日のお弁当作りは大変ですが、ちょっとした工夫で食中毒のリスクを大きく減らすことができます。うちでは、この記事で紹介したポイントを実践しているので、お弁当による食中毒にかかったことはありません。朝7:20頃詰めて、昼12:40頃に食べる時までに、お弁当が傷んだことはありません。

「つけない・ふやさない・やっつける」の基本を意識しながら、安全でおいしいお弁当作りを続けていきましょう。お子さんが安心して食べられるお弁当づくりを、これからも応援しています!

【参考文献】(すべて2025年6月19日閲覧)
政府広報オンライン,食中毒予防の原則と6つのポイント
厚生労働省,大量調理施設衛生管理マニュアル
コープデリ商品検査センター,Vol.3 お弁当用の抗菌シートはどのくらい効果がある?

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